wanderer

人生放浪記(まだ更新中)。物心ついた頃から性別に違和感あり。職業選択の不自由を味わいながら結果的に「放浪者」になってしまったこれまでの人生を振り返る。

けじめと倒産

2006年3月。口頭試問を経て、2年で修士課程を修了した。教授とのことがあったので落とされても仕方ないと思っていたが…。同期の友人と卒業式に出席した。晴れやかな気持ちだった。自分の中にあった学歴コンプレックスをクリアできた。論文を通して吐きそうになるくらい考えて見出した結論は、「このままでいい」。胸はじゃまだからいつか取りたいけど、もうこのままでいい。そしていちいちカムアウトとかしない。当事者でもないのに、どんな思いをしてきたか何も知らないくせに、たとえ医師でも他人に判断されたくない。私は私なのだ、と。
出版社のアルバイトは続けていた。もうすぐ3年になろうとしていた。内心、契約社員に~なんて話がこないかなあと思っていた。そんな話はこなかった(笑)。だいたい、社員の学歴が筑波や早稲田だ。私なんてハナクソみたいなもんだろう。社長と付き合いのある教授兼作家の娘がコネで入社してきたし。そういう会社なんだ。次を探そう。
2008年4月。新聞の求人欄を見ると、制作会社で編集アシスタントを募集していた。応募したら、なんと奇跡的に採用された。公務員以来はじめての正社員だ。建物は古いが半地下でこじゃれたオフィス。FMを聴きながら仕事している。デザイナーとライター、DTPの人がいた。私が担当するのは、大手鉄道会社の旅行パンフの制作補助だった。まずは校正、リライト、そのうち特集ページの取材や執筆までやらせてもらえるようになった。営業のおっさんが1人いたのだが、たたきあげ風で威圧的だった。私も喫煙者だが、ひどいヤニ臭だった。最初からなぜか私にだけ当たりが強かった。公務員のときの最初の職場を思い出す。どうも私はこの年代の男が苦手だ。そんなに生意気に見えるのか? 何も失礼なことしてないのに。
仕事に慣れてきた4か月目、上司から突然集まるよう言われた。なに?このデジャヴ感…。銀行から融資を受けられず、民事再生手続きをとることになった、と。ええ~! だったら私を採用なんかするなよ!わかりきってたことじゃねえか。もお~~!自分のツキのなさに、採用した会社に怒っていた。その日以来、債権者からの問い合わせが多くなるとのことで電話は上司が出ることに。入口も中が見えないようにシートでふさがれた。一気に風景が変わった。 多分、リーマンショックの影響を受けていた。2008年の夏、たった4か月でこの会社を辞めることに。幸い、給料は全額払われた。秋には倒産した。