wanderer

人生放浪記(まだ更新中)。物心ついた頃から性別に違和感あり。職業選択の不自由を味わいながら結果的に「放浪者」になってしまったこれまでの人生を振り返る。

11社目

ブロイラーのように押し込まれた空間で、初回契約の1か月を全うした。参った。さて、次はどうしよう…。出版社でまた校正の仕事の募集が出ていた。でも今度は組織も大きいだろうし堅い系だから大丈夫かな。私は懲りずにエントリーした。面接に呼ばれて行った会社は、想像どおりのきちんとしたオフィスビル。しかもきれい。駅から近い。面接は軽いノリであっさり終わり、悪い感じはしなかった。即採用が決定した。
11社目。大手新聞社系列の出版社。だだっ広いフロア、大勢の人がいる。私が配属されたのは政治経済系の編集部だった。同じようなつくりで部署が区切られ、とくに目印もなく、自分の席から離れるとどこだかわからなくなりそうだった。社員さんたちは錚々たる学歴の持ち主。海外にいる記者と電話しているのか、英会話が聞こえてくる。外部のライターから記事が上がってくるのが夕方からで、午前中はヒマだった。オペレーターさん(派遣)たちもヒマそうだった。校正は私一人。そのあと社員さんがチェックする。ちょっと内容が難しかったが、限られた時間の中でなんとかやっていた。
フロアは広いものの、各レーンは狭かった。それでも前の出版社よりはマシだった。レーンの一番奥に、別の編集部(部下は学生アルバイトのみ)の女性社員(メガネ)がいたのだが、コイツが最悪だった。あいさつしても無視する。他の派遣の人に聞いたらみんな同じことを言っていた。そして自分の席にいくまでにガンガンぶつかってきた。私たちは椅子を目一杯引いていてスペースは十分あるのにだ。そして朝から来るなり「あ~疲れた」、甲高い耳障りな声で「あ~疲れた」と言う。私の隣に座っていた同じ派遣の人は「あいつ、またぶつかってきたよ」と我慢ならないようだった。私の超偏見だが(老眼でない)メガネをかけた人は視野がせまいのか、単に自分の目の前しか見えないのか、自己中心的な人が多い。内心、またメガネかよと思った。私が仕事に集中していると、すぐ脇でガンガンと大きな音を立てて本をそろえたりする。私が見えていないのかわざとなのか知らないが、デリカシーのかけらもない。派遣は人間じゃないのか? 他の編集部からメガネのところに男性社員がきて「殺すぞ」とすごい剣幕で怒っていたこともあった。メガネみたいなタイプは会社で生き残る。死なないよ(笑)。私はちょっと精神的にきつくなり、面接してくれた社員の人に「席を移りたい」と言ったら、誰のことで悩んでいるのか言わずともわかってくれ、席替えは無理だけど共有スペースがあるからそこでやってもいいよ、と言ってくれた。その後、共有スペースに誰もいないときはメガネから避難した。そうして1か月が過ぎた頃…いつも視界に入る男性社員がいる。あまりに広いオフィスで、みんな同じ格好(スーツ)なので特に気にも留めなかったが…またあの人だ(これもメガネをかけていた)。2つ先のレーンに背中を向けて座っている人だった。立ち上がる時、なぜかいちいち後ろを振り返っては私たちのほうを見ていた。特に仕事でからむことはないし、名前すら知らない。気のせいかと思ったが、そうではなかった。私が自席から離れた共有スペースで仕事をしていると、後ろに気配を感じた。私の後ろを通り、話しかけるでもなくふわ~っと自分の席へ戻っていく。気持ちわりい。ちなみに、共有スペースの前後には編集部はないので誰もいない。階のちがう喫煙スペースから私が出てきた時も、そいつはタバコを吸わないのに近くにいることがあった。
契約更新の手続きで派遣会社の営業さんが来たので更新しない旨を伝えた。なんで? 先方は続けてほしいって言ってるのに、と。「内容が難しすぎる」で押し通していたが、納得しない営業さんに突っ込まれ、しかたなく「あの男」のことを言った。私の勘違いかもしれない、でも本当に気持ち悪いんだ、と。そしたら納得してくれた。11社目、5か月で終わった。