wanderer

人生放浪記(まだ更新中)。物心ついた頃から性別に違和感あり。職業選択の不自由を味わいながら結果的に「放浪者」になってしまったこれまでの人生を振り返る。

12社目

11社目の在籍時に12社目が決まった。たまたま派遣会社からオファーメールが来て、ダメ元でエントリーしたところだった。しかもすぐ近くのビル。早引きして面接に行った。運よく採用が決まった。
12社目はテレビ局のグループ会社で字幕を制作している会社。テレビ業界は初めて。広くはないフロアで、オペレーターの方たち(ほとんど女性)が働いていた。奥には社員さん、その隣は…誰だ? 役員の人だった。会社の規模にもよるけど、役員ってだいたい別室じゃないのか? みんなと同じところにいるんだ…。ギョロっとした目で、フロア全員を見渡す(監視?)するように座っていた。なんか感じ悪い。
仕事は字幕の校正。すでに同じ派遣会社から校正で1人きていた。私は2人目の要員だった。時給はガクンと下がったが、そんなことは言ってられない。ドラマやバラエティ番組などOA前の映像を見ながら作成された字幕をチェックする。字幕制作には様々なルールがあり、何もかも初めての経験で面白かった…のは最初の2か月だけだった。
ある日、社員、私たちも会議室に集めさせられた。ギョロ目が言うには、グループ会社(有料チャンネル)で放送しているアニメの字幕専属チームをつくる、と。私たちはそのために採用されたのだった。BSのドラマも担当したが、仕事の9割はアニメになった。実は、アニメが大嫌いだった。おっぱいを誇張したキャラクター、わけのわからない登場人物、声優のしゃべり方や声のトーン、そのファンであるアニメ好きの男…がダメだった。有料チャンネルだからか、ボーイズラブ?とか、異母兄妹の恋愛とか、えぐい内容のものが多かった。これを毎日毎日観なければならない。この時点では対人関係でまったく問題なかったのに…今度はこうきたか~。最初に来ていた派遣の人は家庭の事情とかで急に辞めていった。アニメがダメだったという噂も。私もすでにきつかった。
派遣されて間もない頃に外で「お疲れ様です」と声をかけられた。きれいな人(女性)で、まさか同じ会社の人だと思わなかった。今までのことがあったし、社員が派遣に声をかけるわけないと思っていた。その人は、なぜか私を高く評価した。明らかに他の派遣の人に対する態度とちがう。私が恥ずかしくなるほどだった。誤解を解くため、そんなに大した人間じゃないよとこれまでの経歴をぶっちゃけてちゃらんぽらんさをアピールしたものの、逆効果だった。仕事を通じてその社員さんとはいろいろ話すようになった。が、なんか視線を感じる…ギョロ目がこっちを見ていた。気のせいかと思ったが、仕事中その人と話していると、いつもギョロ目がこっちを見ていた。そういえば以前、ギョロ目が私の後ろを通った時、椅子の足を蹴られたことがあった。すまんの一言もないし。この野郎、と思ったが相手は取締役様なので黙っていた。ギョロ目の足元がおぼつかなくて(失礼)ぶつかっただけなのかもしれないが….ギョロ目、あの人を狙ってるのか?まさか付き合ってる? 彼女が私に声かけたのは当て馬にしたかったから? それにしてもおかしいでしょ。アニメ漬けで疲弊しているのに、余計な問題に巻き込まれたくないなあ。私はその人から距離を置くようにした。せっかく好意を持ってくれた人を傷つける形になってしまった。付き合ってる云々は私の勘違いかもしれないが、あのせまいフロアでギョロ目に監視されるのはごめんだ。
後に、地上波担当の社員のフォローとして新たに派遣の人(おじさん)が入ってきた。私がその仕事をしたかった。本当にアニメが苦痛だった。それにギョロ目も気持ち悪かった。ちょうど1年になったとき、契約更新をせず終了した。