wanderer

人生放浪記(まだ更新中)。物心ついた頃から性別に違和感あり。職業選択の不自由を味わいながら結果的に「放浪者」になってしまったこれまでの人生を振り返る。

10社目

今の派遣先を終える前に、念願の出版社での派遣が決まった。ここは名前を言えばだれもが知ってる有名出版社、のグループ会社。主にビジネス関係の自費出版を扱っているところだった。
その前にまたオーストラリアに行ってきた。2018年2月、メルボルン。夏のメルボルンは初めてだった。暑かった。アンさんからの手紙をあれから見つけ、電車で引っ越し先の住所に行ってみたが…もう20年も前だ。ここにはいないだろう。7年振りで街の様子も変わっていた。どんどん新しいビルが建つ。今メルボルンで一番高いというユーレカタワーに上り、夜景を見てきた。それからグレートオーシャンロード。23年前に行ったときは冬の時期、しかも雨が降っていたのでもう一度見ておきたかった。今度は真夏。この日は気温35度だった。圧巻だった。
さて10社目。有名出版社のグループ会社。派遣の営業(若い男)は来ず、初出社は私一人で行った。営業から言われたとおりに受付で呼び鈴を押しても反応なし。少し待ってもう一度呼び鈴を押してやっとつながる。私が今日からくることが伝わっていなかったらしい。面接は会議室で行われたので、現場を見るのはこの日が初めてだった。うう、なにこれ…。ワンフロアにぎっしり人が詰め込まれてる。しかも部屋のど真ん中に太い柱。その柱ギリギリで両側にも人が座っている。席の後ろを通るのも無理なくらい、隙間がない。みんな思いっきり前に椅子を引いてる。うわあ…ブロイラーみたい…。面接してくれた部長さんにあいさつ。「ええ~と、そっちあいてるかな」と、校正部署とは離れた違う係の一番奥の席(しかもほこりだらけ)に押し込まれた。きったねえなあ。まず初日から印象が悪かった。ここでの仕事は校正。すでに同じ派遣会社から校正で来ている人が2人いた。他の派遣会社からも2人来ていた。席があまりに汚いので自分で掃除し、なんとか座った。一番奥の席、しかも途中に太い柱があるので、トイレに行くのも一苦労だった。あそこの席、いま人がいないな、と確認して、椅子を引いて(それでも通るのがやっと)、やっと部屋の外に出てトイレに行った。毎日こうだ。膀胱炎になりそうだった。仕事はもちろんきちんとやっていた。この会社は新卒~3年目くらいの若い社員ばかり。中堅がいず、あとは部長2人(私よりちょっと年上か)だった。いびつだなあ。でもこの理由がなんとなくわかってきた。
ここの社長、クセ者だった。ワンマンだった。社長の席は最も一番奥のスペースで、本がうずたかく積もって壁のようになっていた。だいたい昼過ぎに出社するので、午前中は若い女子社員が掃除していた。で、出社すると自分のお気に入りの音楽をかけるのだった。音楽がかかっていたら「俺いるよ」のサイン。社長は私と同世代か、ちょっと上か。かかっている音楽はCHICとかJ.Bとか、私が好きなジャンルだった。やだなあ、あんたと同じだなんて。そして社長が飼っているペットの亀の世話のため、休日も交代で会社に来ているらしい。アホくさ。学校出たての何も知らない若い子じゃなければ、バカらしくてやってられないだろう。それで中堅クラスの社員がいないんだ。
編集者といっても結局は営業だった。本を出したいという人のところへ行って、打ち合わせしてくるのだ。だから日中はほとんど人がいなかった。それで、校正の私たちがへんな役回りをさせられていた。編集が企画書を出す、それを社長がチェックする、ダメ出しがでてやり直し…この「ダメ出し」を私たちが編集のかわりに聞かなければならなかった。なんでよ? 企画した編集担当に言えよ。その企画書の内容すら私たちには流れてこないのに。社長のタイミングで急に呼ばれる。2日目、校正チームを仕切っていたおじさん社員に呼ばれ、なにも聞かされないまま社長のところへ行くよう言われた。「これポケットに入れて」とボイスレコーダーを持たされた。WHYなぜに? 部長と別の派遣さんと一緒に社長のお小言を聞いていたら、昨日きたばかりの私に「何が問題かわかってんのか」とのたまう。はあ?(ブチン)「昨日来たばかりで、さっき急にここへ行けと言われたので何も知りません」と言おうとしたところで部長が「はい、〇〇が〇〇で~」とフォロー?した。なにこれ? お小言が終わった後、もう一人の派遣さんといっしょにおじさん社員のところへ行き、社長の指摘したことを伝えるのだ。だからボイスレコーダーを持たせたのね。っていうかおじさんが行けばいいのに。先輩の派遣さんによると、社長がこのおじさん社員を嫌っているらしい。あいつは呼ぶなとお達しが出たらしい。だから私ら派遣にお小言を聞く役をさせているそうだ。いい迷惑だった。これが2日目。こんな業務があるなんて聞いていないし。だいたいおかしいでしょこんなの。派遣会社の営業に「無理です」と言ったものの1か月は辞められない、と。前の派遣を辞めたことを激しく後悔した。