wanderer

人生放浪記(まだ更新中)。物心ついた頃から性別に違和感あり。職業選択の不自由を味わいながら結果的に「放浪者」になってしまったこれまでの人生を振り返る。

親は、もう私には何も言わなくなった。昼前に起きて、なんとなく朝食を食べて、部屋にこもり、タバコを吸い、風呂に入って晩飯を食べ、寝る。ただただ身体だけが生きていた。妹は結婚が決まり、私とは正反対だった。
幸い、飼っていたセキセイインコたちはようやく私のことを認めてくれて、以前のようになついてきた。この子たちの世話が心の支えだった。
でも、それも崩れようとしていた。どうやって死のうか…いつしかそんなことを考えていた。同時に遺書を書いた。葬式にはこの音楽をかけてほしい、墓に閉じ込められたくないのでオーストラリアに遺灰をまいてほしい、と。
なんでこんなふうに生まれてきちゃったんだろう。自助グループに行ってもなじめない。水商売、もしくは男ならガテン系の仕事、というのもステレオタイプで自分には納得できない。もちろん、もう少し体格がよければその道で働くことも可能だったろう。でも、今の自分はどうみても非力だ。かといって立派な学歴があるわけでもない。それに、手術が可能になったといっても、完全に男性の機能が持てるわけではない。そして埼玉医科大のあの医師から言われた「君、本当にそうなの?」という言葉。物心ついたときからそうだったのに。正面からぶった切られた気分だった。あの一報を知って希望を持ったが、現実の厳しさに耐えられなくなっていた。
私は部屋で一人、意識をどんどん自分の奥に向けていた。私が死んだって明日はくるし、世の中は変わらない。いったい私はどこから来たのか、なんでこの家にうまれてきたのか。私の両親から祖父母、顔の知らない祖先までさかのぼる。真っ暗で何も見えない。ぞっとするほど冷たい。死の感覚を覚えた。