wanderer

人生放浪記(まだ更新中)。物心ついた頃から性別に違和感あり。職業選択の不自由を味わいながら結果的に「放浪者」になってしまったこれまでの人生を振り返る。

どん底

日本でも手術ができるようになったことはうれしかった。これを機に少しずつ認知されていくだろうと思った。手術まで行くのは難しいだろう。でもホルモン治療まではいきたい。そのためにも次の仕事を探さねば。再び転職活動をスタートさせた。相変わらず出版関係の仕事をメインに探していたが、なかなか見つからない。単発でお金がよかったので引っ越し屋のアルバイトに応募しようと電話したものの「女はダメ」とはっきり断られた。まあ、確かに体力ないから使い物にならないのかもしれない。でも「女はダメ」という言葉に敏感になっていた頃にまた言われ、グサッときた。かといってドライバーの仕事などガテン系の仕事に就くのは(当時FTMには多かったようだが)、自分の中でちがうと感じていた。
もう100社以上応募していたと思う。相変わらず履歴書には性別や扶養の義務といった欄がある。ああ、欧米ならこんなこと書かないのに。私はオリジナルの履歴書をつくり(性別欄を削除)、なんとか面接までこぎつけたときは「実は…」と、正直に話したこともあった。正直に言っても採用してくれるところがきっとある、そう思っていた。採用されるからには言っておかねばと思っていた。でも私が世間知らず。甘かった。体よく落とされた。都内の某人権団体の面接に行ったとき、ここなら理解してくれると思い、正直に打ち明けた。そしたら面接官(男性と女性)が明らかに動揺した。それでも取り繕って(いるのが分かる)「じゃあトイレどうしましょうかね」といかにも理解を示しているような態度で話し、面接が終わって私が退室すると、ドアの向こうから「はあ~」と大きな溜息が聞こえた。何が人権団体だ、働いてるやつらの意識なんて形だけだ。
友達とお店に行ったとき、店員の男が私の顔を見て(こいつ、男or彼氏じゃないな)と確認して、私の友達をナンパしようとした。こういうことはたびたびあった。また、胸のふくらみから女だと判断されたり(これは実際に言われた)、男のやること言うことがいちいち気にさわっていた。そうだよ、背も小4で生理がきてから止まってしまったし、ケツもでかいし、体形はどうみても女っぽいよ。この野郎、女のケツばかり追っかけてんじゃねえよ! 私はすべての男にイライラしていた。
いくら応募しても決まらない。簡単なバイトでさえも決まらない。タバコの本数も増えてきた。私はいったいどうしたらいいのだろう。ワーホリに行かず、もう少し我慢していたら(公務員だったら給料は安泰なので)手術までできたんじゃないか、とちょっと悔やんだ。オーストラリアで仲良くなった友達は、帰国するとほとんどの人が結婚していった。まあ、ノーマルなら自然とそういう流れになる。私にはそれができない。
なんで生まれてきたんだろう。もう生きてても意味がないんじゃないか…。起きてるのか寝てるのか、現実なのか夢なのかわからなくなっていた。
今思えば鬱になっていた。