正月明けのある日、海に行こうとパース駅で電車を待っていると「Are you Japanese?」と声をかけられた。当時の私は真っ黒で、自分で言うのも変だが国籍(性別も)不明だった。ニュージーランドのマオリ、シンガポール人などと間違われることもあった。「Yes」と思わず振り向くと、小さなおばあさんが立っていた。私がこれから海へ行くというと「ついていってもいいですか」と言ってきた。なんでもこのばあさん、パースの郊外に家を買ったんだそう。土地勘がないらしく、日本人ぽい私に声をかけたらしい。海へ行く間、まだ建築中の家の写真を私に見せ始めた。ただの自慢かよ。海までついてきたが、じきに帰っていった。不思議なばあさんだった。
定住していたおかげで、日本からの荷物を受け取りやすくなった。ある日、家族からまた荷物が送られてきた。インコちゃんたちは元気そうだ。寺田恵子さんのニューアルバム「END OF THE WORLD」のCDと年賀状(一言直筆メッセージつき)も入っていた。私は旅の間、たわいもないことを書いて恵子さん(事務所あて)に手紙を送っていた。たった一言でも直筆だ。いやあ~うれしかった。このアルバムの曲も後半の旅のお供に加わった。「この空の下」を聴くと、当時のことを思い出す。